14歳の決断。赤子を『人間として育てるか』『精霊のまま返すか』原住民〝ヤノマミ族〟
ヤノマミ族という原住民をご存知だろうか。
ヤノマミ族の歴史は1万年とながく
その1万年もの間、独自の文化、死生観を守っています。
ヤノマミ族とは
ヤノマミ族はブラジルとベネズエラにまたがるジャングルに分散して暮らしている原住民族。
人口は2万〜3万人ほどで200ほどの集落に分かれて暮らしています。
主食は動物の肉や魚、昆虫、キャッサバなどで、狩猟や採集を主な生活手段としています。
これは『シャボノ』と呼ばれ、雨の多いアマゾンにとってかかせない屋根あり住居。
ヤノマミ族にとって外部の人間は下の存在
ヤノマミ族の〝ヤノマミ〟は人間の意味でヤノマミ族は我々外部の人間のことを
『ナプ』と呼びます。
彼らはナプを下の存在として認識しています。
14歳の少女が1人で決断するヤノマミ族の『精霊返し』
ヤノマミ族は平均14歳で妊娠、出産をします。
へその緒がついたままの赤子は人間ではなく精霊と考えられ
『人間として育てるか』
『精霊として返すか』
14歳の少女が1人で決断しなくてはなりません。
抱き上げれば人間として、精霊ならば自らの手で殺め、
赤子をバナナの葉に包み蟻塚にいれ蟻に食わせるのです。
それが『精霊返し』
少女は僕たちの目の前で嬰児を天に送った。自分の手と足を使って、表情を変えずに子どもを殺めた。動けなかった。心臓がバクバクした。
それは思いもよらないことだったから、身体が硬直し、思考が停止した。
その翌日、子どもの亡骸は白蟻の巣に納められた。
そして白蟻がその全てを食い尽くした後、巣とともに燃やされた。
引用:「ヤノマミ」 ヤノマミ、それは人間という意味だ 国分拓著 NHK出版
出産、儀式は男たちを閉め出した森の中で行われ、出産に立ち会う女たちもシャボノで待つ男たちも少女の決断には一切、口をださない。
女たちのかなしみ
精霊に返すのも様々な理由がある。
人工が増え過ぎると狩猟生活が苦しくなるため、
赤子を人間として迎えられない場合もある。
誤解のないように言っておきたいのだが、ヤノマミの女たちは何の感情もなしに子どもを天に送っているのではない。僕たちは、天に送った子どもたちを思って、
女たちが一人の夜に泣くことを知っている。
夢を見たと言っては泣き、声を聞いたと言っては泣き、陣痛を思い出したと言っては泣くのだ。
ヤノマミのルール(掟と言うより習慣・風習に近い)では死者のことは忘れねばならないのに、女たちは忘れられないのだ。
引用:「ヤノマミ」 ヤノマミ、それは人間という意味だ 国分拓著 NHK出版
ヤノマミ族の価値観
ヤノマミ族は集落の人工が増えれば狩猟生活での困難を避けるため
赤子を精霊に返し生活を保つ。
かたや我々は世界的に人工が増え続けていて
地球上のエネルギーや資源を食らって生きている。
ヤノマミ族はこのサイクルを1万年前から本能的に理解していたのかもしれない。
生と死の価値観
私はヤノマミ族の本を読んだあと自身のSNSで衝撃的だと投稿しました。
その際に1人の友人が『かわいそう』とコメントしました。
違和感
私はその言葉に違和感を覚えました。
確かにヤノマミ族の女性達は赤子を失ったことに悲しんではいますが、
かわいそうという言葉はなにか違う。
自身の文明の価値観で異なる文明は図れないのではないだろうか。
彼らは生きるために我が子を自分で殺し、感謝を捧げたのちに土に還しているのです。
「人間も死ねば天に上り、精霊になる。地上の死は死ではない。魂は死なず精霊となる」
ヤノマミ族にとって死は身近なもので、死と遠のいた生活をしている私達には
本当の意味で理解できないのではないだろうか。
価値観の違い、生きる事…こういった原住民の存在が
我々にたくさんのことを考えさせてくれるのです。
NHKの国分拓さんが150日間におよぶ長期同居生活を綴った著書「ヤノマミ」
少女の葛藤やその時々の情景が細かく描かれています。こちらは文庫版。
映画にもなっています。これは衝撃的でした。アマゾンの生き物の息遣いと共にヤノマミ族の生活を感じることができます。